この記事は「Vektor WordPress Solutions Advent Calendar 2021」の12月7日の記事になります。
Lightning を使って多言語サイト構築をお考えの方向けに、参考になる構築方法、気をつけたいポイント、メジャーなプラグインまとめについてを書いています。
こんにちは、ベクトルスタッフの河野です。
前回の、弊社スタッフのササキさんによる「見逃しているかも?Lightning G3 Pro Unit リリース後に追加したヘッダー・フッターまわりの便利な機能」の記事に引き続き、「Lightning を使って WordPress で多言語サイトを構築するには?」というタイトルで、最近お問合せが増えてきた Lightning を活用した多言語サイト構築についてをこの機会にご紹介したいと思います。
要注意!多言語サイトを構築する前に
ウェブサイトの多言語化は、
- サイトのボリューム
- ターゲット言語地域の特性
- 言語それぞれでコンテンツを分けていくかどうか
- 翻訳対応の担当者のITスキル
- 翻訳フローをどうするか
など、さまざまな条件を考慮する必要があり、一概に最適な構築方法や、ベストなプラグインをご紹介するのは難しいところがあります。
今回の記事を参考にしつつも、ご自身のサイトのコンテンツやターゲット言語に応じて最適な構築方法を探ってみてください。
お急ぎの方への最適解3選!
「Lightning の全ての機能を損なわない」ことが大前提でしたら、まずこちらの3つの方法があります。
言語ごとに完全に独立したサイトで構築
WordPress で多言語サイトというと「とにかくプラグインを使って構築する」という選択肢を思い浮かべてしまうかと思います。しかし長期的に別言語のサイトを運用していくと考えた場合「サーバーをターゲット言語のエリアにする」「更新運用を現地のスタッフに任せる」など、結局それぞれ独立したサイトとして運用する方が自由度が高いケースがあります。プラグインの利用は、一度導入してしまうと簡単に外せなかったり、URLが変わってしまう問題などもありますので、素直に言語ごとにURLを分けて独立したサイトで構築するのも一手かと思います。
と、書いてみたのですが、イシカワさん、いかがでしょー?
まぁぶっちゃけ一手と言いますか、一番間違いないです。
Lightningの場合、無料版の標準機能だけならさておき、Lightningに限らず有料の高機能テーマはありとあらゆる項目を1言語前提でデータベースに保存しますので、多言語対応は難しいです。
また、多言語プラグインは各プラグイン相当クセの強い処理をしますので、バックアッププラグインやその他プラグインが正常に使えないなどのケースも多く、実際作ってみて後からクライアントから理不尽な追加要望などが来ると確実に死ぬ(過去に経験がありますが結局多言語対応システムを全部手組みで実装するハメになりました)ので、余程ノウハウに自信がある方でなければ別のサイトとして作った方が結果的にコストを抑えられます。
そもそも国が違えば本来伝えるコンテンツの中身もユーザーの好みも違うので、最初は「英語にするだけ」のつもりでも後から高確率で行き詰まります。
その時の対応の難しさ(多言語プラグインで独自処理をされていると安易に言語毎のサイト分離ができない)を考慮すると「悪い事は言わないので別のサイトで作りましょう。」と言うのが僕の見解です。
なるほどです〜!!ありがとうございまーすっ!😀
簡単なブログとかならプラグインで全然いけるんですけど、「ウェブサイト」となるとやはり独自の保存項目が多数あるので、最初は何とか乗り切っても結局行き詰まってくると思います。
なんかもう結論出ちゃったけど、せっかくなので、続けるよ〜!!✌️
予算があるなら、自動翻訳+手動翻訳で、サイトを爆速多言語化「WEGLOT」
「WEGLOT」は2016年に多言語エリアEUのフランスで誕生したサービスです。自動翻訳の精度上昇で注目されている DeepL 翻訳を導入できるプラグインが用意されており、WordPress サイトが何ページでも何言語でも素早く多言語化できます(プラグインのインストールと登録、自動翻訳をあてるだけなら、15分ほどで完了してしまいます)。すごい時代になりましたね?
WEGLOT導入についてのメリットと注意点など、もう少し詳しくはこちら
翻訳データが WordPress のデータベース内に保存されるのではなく、WEGLOT サーバーに保存され、JavaScript でサイトに実装される形になっています。WordPress のデータベースに影響を与えず、多言語化のオン・オフの仕組みがシンプルです。日本でエンタープライズ向けサービスとして有名な WOVN とよく似たシステムで、WOVN よりもリーズナブルに導入できるので、小さな企業のサイトにも導入しやすい価格帯になっています。また、自動翻訳があたるだけでなく、気になる箇所は手動で翻訳修正でき、ビジュアルエディタ機能搭載で、サイトの見た目そのまま編集作業ができる点も大きな魅力です。ノーコーダーの担当者にも直感的に編集作業をしてもらえるでしょう。
爆速で多言語化できるメリットを享受できる一方で、文字の量、翻訳対応したい言語数によって月額(年額)が変わるサブスクリプション形式のため、見積もりがしずらいところが難点です。
短期間ですばやく構築したい、とか、キャンペーンやイベントサイトで一定期間だけ多言語化を試してみたい、といったケースに向いていると思います。
WordPressのマルチサイト機能で構築 + Multisite Language Switcher
WordPessには1回のインストールで、複数の兄弟サイトを作成できる「マルチサイト」機能があります。この機能を利用しつつ、言語スイッチャー機能のみ無料プラグイン「Multisite Language Switcher」を活用するという多言語サイト構築の方法です。Lightning の機能を損なうことなく、Multisite Language Switcher で言語スイッチと多言語SEOにも対応でき、WordPress の機能を上手に使った多言語サイト構築のカタチだと思います。
注意点として、マルチサイトは一度導入するとなかなか元には戻せなくなります。データベースが1つで楽に管理できることがメリットである一方で、リスク分散ができないという面もあります。また、対応していないプラグインもありますので、よく調べて検証しておく必要があります。
Lightning は高機能ゆえに、一部のメジャーなプラグインでは翻訳不可の箇所があります
つづいて、一般的にメジャーな多言語化プラグインでは翻訳できない Lightning の機能について触れておきたいと思います。
Lightning は、ビジネスユースに特化した機能を持たせていることで、ある意味で複雑な構造のテーマでもあります。このため、一般的にメジャーどころの多言語化プラグインを導入しても、翻訳データが当たらない箇所が出てきてしまいます。
翻訳ファイルがあたらない Lightning 特有の機能と、この箇所に対応できないプラグイン、対応できるプラグインは以下のようになっています。
翻訳ファイルがあたらない「★Lightning 特有の機能」とは?
- カスタマイズから設定するトップページスライダー(VK Blocks Pro のスライダーブロックで代替可能)
- CTA機能(ExUnit)
- 連絡先情報 / お問い合わせ情報(ExUnit)
- Pro Unit のキャンペーンテキスト機能
など、1箇所で情報を編集して全ページ(または、任意の一部のページ)に出力するような機能において、翻訳があたらないプラグインがあります。
対応できない多言語化プラグイン:
Bogo、Polylang、WPML など。翻訳データを WordPress データベース内に保有するもの。
「どうしてもBogo、Polylang、WPMLで構築する必要がある!」というケースは、上記のような一部の機能に制限がかかる前提で構築することになるかと思います。
対応可能な多言語化プラグイン:
GTranslate、Translate Press、WEGLOT など。翻訳データを外部サーバーで持たせるタイプのもの。
GTranslate、Translate Press、WEGLOT などのプラグインでは、HTMLとして完成したページに翻訳をあててくれるプラグインですので、Lightning やその他プラグインがどのように文字を出力をしようが翻訳をあててくれるというメリットがあります。その一方で、元言語となるページがありきで翻訳ページが生成されますので、例えば、元言語となる日本語ページには存在しないページだけれど、英語ページだけ作成したい、といったことができないのでその点に注意が必要です。
WordPress サイト多言語化・翻訳プラグインと機能比較表
こちらでは、2021年現在メンテナンス・アップデートが継続していて、利用者の多いメジャーなサイト多言語化・翻訳プラグインをピックアップしています。
詳細につきましては、公式サイトで必ず最新情報をご確認ください。
プラグイン名 | 翻訳範囲 | 翻訳先言語のみの ページの設置 | 多言語SEO (hreflang対応) | 「★Lightning 特有の機能」の翻訳対応 | 利用料金 |
---|---|---|---|---|---|
Bogo | 投稿、固定ページ、メニュー、ウィジェット、カテゴリー、タグ、サイトタイトル、キャッチフレーズ | 可能○ | 対応○ | 不可× | 無料 |
Polylang | 投稿、固定ページ、メディア、カテゴリー、投稿タグ、メニュー、ウィジェット、カスタム投稿タイプ、カスタムタクソノミー、先頭固定表示投稿、投稿フォーマット、RSS フィード、すべてのデフォルトの WordPress ウィジェットに対応 | 可能○ | 対応○ | 不可× | 無料/ 有料 |
WPML | 投稿、固定ページ、メディア、カスタムタイプ、タクゾノミー、メニュー、テーマ、プラグイン、ページビルダー | 可能○ | 対応○ | 不可× | 有料 のみ |
GTranlate | 公開されたページの表示テキストすべて。 | 不可× | なし (有料版で○) | 可能○ | 無料/ 有料 |
TranlatePress | 公開されたページの表示テキストすべて。 投稿、固定ページ、カテゴリー、タグ、メニュー、テーマ、プラグイン (メタディスクリプション、URLスラッグの翻訳は有料版) | 不可× | 対応○ | 可能○ | 無料/ 有料 |
WEGLOT | 公開されたページの表示テキストすべて。 | 不可× | 対応○ | 可能○ | 無料/ 有料 |
Multisite Language Switcher | なし。マルチサイトでの言語スイッチャーの機能のみ。 | 可能○ | 対応○ | 可能○ | 無料 |
プラグイン名 | 翻訳範囲 | 翻訳先言語のみの ページの設置 | 多言語SEO (hreflang対応) | 「★Lightning 特有の機能」の翻訳対応 | 利用料金 |
---|---|---|---|---|---|
Bogo | 投稿、固定ページ、メニュー、ウィジェット、カテゴリー、タグ、サイトタイトル、キャッチフレーズ | 可能○ | 対応○ | 不可× | 無料 |
Polylang | 投稿、固定ページ、メディア、カテゴリー、投稿タグ、メニュー、ウィジェット、カスタム投稿タイプ、カスタムタクソノミー、先頭固定表示投稿、投稿フォーマット、RSS フィード、すべてのデフォルトの WordPress ウィジェットに対応 | 可能○ | 対応○ | 不可× | 無料/ 有料 |
WPML | 投稿、固定ページ、メディア、カスタムタイプ、タクゾノミー、メニュー、テーマ、プラグイン、ページビルダー | 可能○ | 対応○ | 不可× | 有料 のみ |
GTranlate | 公開されたページの表示テキストすべて。 | 不可× | なし (有料版で○) | 可能○ | 無料/ 有料 |
TranlatePress | 公開されたページの表示テキストすべて。 投稿、固定ページ、カテゴリー、タグ、メニュー、テーマ、プラグイン (メタディスクリプション、URLスラッグの翻訳は有料版) | 不可× | 対応○ | 可能○ | 無料/ 有料 |
WEGLOT | 公開されたページの表示テキストすべて。 | 不可× | 対応○ | 可能○ | 無料/ 有料 |
Multisite Language Switcher | なし。マルチサイトでの言語スイッチャーの機能のみ。 | 可能○ | 対応○ | 可能○ | 無料 |
最後に & オマケ
ということで、Lightning を活用しての WordPress サイト多言語化についてをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。いやぁ、色々と考慮しなければいけない事があって、多言語サイトの構築はなかなか面倒ですよね。「こんなケースでは、こんなふうに構築したよ」という事例の情報もなかなか表立って記事になっていないこともあり、皆さん孤独に構築されて独自の方法を見つけていらっしゃるケースが多いのではと思います。
うちではこんな風にLightningでサイト多言語化してるよ!というお話があればぜひ教えてくださいませ!
今後の記事では、Lightning で実際に多言語化したデモサイトを構築してご紹介できたらと思っています。
手前味噌ですが、過去に WordCamp の登壇でもう少し詳しく多言語化プラグインについてお話しさせていただいたり、ディレクターさん向けの多言語サイト制作のポイントの話もありますので、もしご興味がありましたら併せてご覧ください。
「Vektor WordPress Solutions Advent Calendar 2021」次回の記事は、 チーム・ベクトルのしもむらさんが「WordPressコアにチケットを送ってコントリビュートした話」の記事を書いてくれるそうです!何それ、カッコイイ!私もやってみたい!お楽しみに!
この記事を書いた人
- 株式会社ベクトルでリモートワークしながら、香港拠点でお仕事しております。北京語と広東語と英語をいずれも中途半端に操ります。VWS 勉強会の賑やかし担当。WordCamp Asia 2020&2023 実行委員。アジアをうろうろ。
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